葉酸が欠乏するとどうなる?四大悪影響を解説!

妊娠中の不足は「神経管閉鎖障害」のリスクが高まる

一般的には葉酸と言えば妊婦さんというイメージがある人が多いのではないでしょうか。

これは妊娠中、特に葉酸の需要が高まることから言われることです。

葉酸はビタミンB12とともに細胞分裂に欠かせない栄養素で、主に細胞の中心にある核酸(DNA)を生成するために使われます。

妊娠初期の4~12週の胎児はすごい勢いで細胞分裂を繰り返して成長するため、とても多くの葉酸が必要になります。

この時期に葉酸が欠乏すると脊髄や脳が正常に形成されず「神経管閉鎖障害」という先天性の病気を発症するおそれが出てくるのです。

しかし葉酸をしっかり摂取すれば神経管閉鎖障害のリスクは6~8割ほども軽減すると言われています。

そのために女子栄養大学は妊婦に対して1日に480μg、妊娠前は640μgの葉酸の摂取を勧めています。

葉酸の欠乏が原因の貧血もある

普通、貧血は鉄が不足することによる「鉄欠乏性貧血」が一般的ですが、葉酸とビタミンB12が欠乏するために起こる貧血もあります。

葉酸とビタミンB12は赤血球を生成するために必須で、もし不足すると巨赤芽球という赤血球として機能しない未熟な細胞が多く出来てしまいます。

そのためこの貧血は「巨赤芽球性貧血」とも呼ばれるのです。

また、葉酸を含むビタミンB群が発見される以前は治療の方法がなく、死に至ることもあったので「悪性貧血」とも呼ばれていました。

症状は一般に知られる貧血と同じで、倦怠感やめまい、動悸や顔色の悪さなどで、初期は症状がないこともあります。

ちなみにビタミンB12が欠乏して起こる貧血では、上記の症状に加えて手のしびれが出ることもありますが、葉酸が欠乏した場合の貧血にはその症状は現れません。

現在ではどの貧血でも、欠乏したものを補えば治療できるようになりました。

しかし、症状だけでは判断できないので「貧血かな?」と思ったら検査を受けるようにしましょう。

動脈硬化が進む、うつにも関係している可能性が

また、葉酸の欠乏は「動脈硬化」のリスクを高めてしまう要因にもなります。

葉酸が関係する動脈硬化の原因物質はホモシステインです。

ホモシステインは血中に含まれるアミノ酸の一種で、必須アミノ酸の生成に必要な物質ですが、血中濃度が高いと動脈硬化が進みやすくなります。

普段は葉酸がビタミンB6やB12 と一緒になってホモシステインを代謝し、血中の濃度を下げる働きをしていますが、これらが欠乏してしまうとこのホモシステインを代謝できなくなり、結果としてホモシステインの血中濃度を上げ、動脈硬化を進行させてしますのです。

ですから十分な葉酸の摂取は動脈硬化を予防すると考えてもいいでしょう。

心の健康との関連性も疑われています。

現代人にうつが増えたのも、昔ながらのビタミンやミネラルが豊富な食生活から欧米型の肉中心の食生活に偏ってしまったからだというのです。

そして葉酸をはじめとするビタミンB群や、その他のビタミン、およびミネラルは心のバランスを司る神経伝達物質を生成する重要な働きをしています。

実際にうつなどの精神疾患の患者は、心のバランスを司る神経伝達物質が過不足な状態にあることが分かっています。

もちろん精神疾患は葉酸の欠乏だけが原因ではありませんが、適切な量の葉酸が摂取できていることは、心が健康であることの条件の一つだと言えるでしょう。

しかしこちらはまだより多くの研究が必要な分野です。

葉酸が欠乏しないためにバランスの良い食事をしよう

ここまで、葉酸が欠乏したらどうなるのか説明してきました。

皆さんはおそらく「葉酸って不足するとこわいんだな」と思われたでしょう。

確かに葉酸が欠乏すると生命維持が危ぶまれるほどの影響が出ますが、あまり過度におそれることもありません。

なぜなら現在の日本ではごく普通の食生活をしていれば、葉酸が健康を害するほど欠乏することはほとんどないからです。

ただしやはり妊娠中は意識的に多く摂取すべきですし、あまり間を空けずに出産をされている人、双子など多胎妊娠の人、疾患を持つ人は葉酸の欠乏に気をつけるべきでしょう。

また、食生活が乱れがちな人も注意が必要になります。

最後に、葉酸はいろいろな栄養素と助け合い、関係しあってその効果を発揮しています。

ですから葉酸を摂取することも大事ですが、その他の栄養分を過不足なく取ることも同じくらい大切なことです。

「バランスの良い食生活を」このありふれた言葉が健康への大いなるヒントなのです。