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葉酸はアルコール摂取で不足しがちに
結論からいうと、葉酸はアルコールを摂取することで欠乏しやすくなります。
なにも葉酸だけが特別にアルコールに弱いというわけではなく、「お酒の飲みすぎ」で不足しやすい栄養素の一つというわけです。
じゃあお酒は健康に悪いのかというと、そうとも言い切れません。
厚生労働省は日本人が1日に飲むお酒の量がビールなら中瓶1本、日本酒なら1合ほどであれば健康にそれほど悪い影響はないとしています。
つまりそれ以上の量が「飲みすぎ」となるわけですね。
でもこれは一般男性の量なので、女性やお酒に弱い体質の人はもっと少ない量が適切だと考えてください。
葉酸が一番必要になるのは妊娠1ヶ月前から
ところがこのアルコール事情が変わる事態というのが、妊娠です。
葉酸は普段の生活では、ある程度バランスのとれた食事をしていればそれほど不足する栄養素ではありません。
厚生労働省は成人が1日につき240μgの葉酸をとることを推奨していますが、この量はほうれん草のお浸しで小鉢2杯分ほどです。
しかし妊娠1ヶ月前から妊娠3ヶ月ほどにかけての推奨量は480μgと倍になるのです。
さらに女子栄養大学では、妊娠の可能性がある女性は640μgの葉酸を摂取するのが理想だとしています。
もちろん普段の食事で640μgもの葉酸をとるのは難しいので、このうちの400μgをサプリメントなどで補うことを勧めていますが、こうなるとこの時期の葉酸をアルコールで無駄にするのはもったいないことです。
アルコールで葉酸が不足するわけ
ここで話をアルコールに戻しますと、お酒が好きな人の栄養が偏りがちになるのは栄養士の間では有名な話なのです。
難しい話は抜きにしてちょっとお酒に合う食べ物を想像してみてください。
焼き鳥、から揚げ、刺身、天ぷら…肉中心のおかずが多く、なかなか野菜たっぷりというわけにはいきません。
そして、お酒が好きな人はなおさら「飲む」ことが優先され、「食べる」ことが後回しになってしまいます。
ちなみにお酒の成分は、水分、エタノール、糖分なのでお酒には葉酸をはじめとする栄養分はほとんどありませんし、アルコールの濃度が高くなればなるほどその少ない栄養もますます少なくなる傾向にあるのです。
葉酸やビタミンがアルコールの代謝に使われてしまう
アルコールのもう一つの問題は、肝臓でアルデヒドという有害物質に変わり、それを無害な酢酸に代謝するためにたくさんのビタミンが使用されてしまうということです。
葉酸ももちろん不足しますが、この肝臓での代謝で使われる栄養素の代表はビタミンB1です。
そしてアルデヒドを酢酸にするために肝臓は一生懸命働くことになりますから、過度の飲酒は肝臓を疲れさせることにもなるのです。
またお酒には利尿作用があるので、トイレの際に水分と一緒にナトリウム、カリウムなどのミネラルも排出されてしまうのです。
そのために飲酒の機会がある人は普段からより葉酸だけでなくビタミンとミネラルに気を付けた食生活をする必要があるでしょう。
アルコールはたしなむ程度に、しかし妊娠前と妊娠中は控えましょう
ここまでの説明で、まるでお酒を悪者のように思う人も多いかと思いますが、適度なお酒は健康に良いという研究結果があるのも事実です。
1981年の少し古い研究になりますが、イギリスのマーモット博士によればお酒をたしなむ人のほうが、全くお酒を飲まない人よりも長生きの傾向があるというのです。
しかしこれはもちろん「適量を守れば」の話で、毎日大量に飲む人やアルコール依存症の人までになってしまうと死亡率は一気に上昇します。
また、ワインやビールなどの原料になるブドウやホップの香りは人間をリラックスさせる効果があります。
しかしそれでも厚生労働省は、妊娠前からの大量の飲酒は胎児に悪影響を与える可能性を指摘していますし、前に書いた通り葉酸などのビタミンやミネラルを無駄に失ってしまいます。
ですからアルコールは妊娠を予定していなければたしなむ程度、妊娠を希望しているなら控えるというのが一番良いことなのではないでしょうか。